「知的障害やASDのある子どもに、自立心ってどう育てたらいいの?」
「支援してもらう側の“心の姿勢”って考えたことありますか?」
障害のある子の育児では、周囲のサポートや配慮がよく話題になりますが、実は“本人の心の持ち方”もとても大切だと考えています。
本記事では、軽度・中等度知的障害と自閉スペクトラム症(ASD)を持つ兄弟を育てる私が、日々の中で意識している「6つの心=マインドセット」について、実例とともにわかりやすく解説します。
写真は休日に遊びに行った祖母の家で一緒にポップコーンを作る軽度知的障害と自閉スペクトラム症(ASD)を抱える長男。次男も手前にいたのですが、撮影中に画面外に行ってしまいました(笑)

今回はちょっと切り口を変えて、「障害を持つ子どもたち自身のマインドセット(心の持ち方)」について考えてみたいと思います。
支援する側の姿勢(配慮や受け入れ)はよく語られますが、「当事者である子どもたち自身の心の在り方」について語られることって、意外と少ないと思いませんか?
でも、教える側に対する教わり方の心構えがあるように、支援する側の姿勢があるのなら支援を受ける側の姿勢もあると思います。シンプルにその方が支援していただける人も気持ちがいいのではないのでしょうか。うちの子達を支援するときに、嫌だなと思ってほしくないのです。
具体的に、どのようなマインドが望ましいか。私自身が障害児の親として日々関わる中で強く思うのは、自立の姿勢と感謝の心です。
今回は、軽度知的障害や中度知的障害、自閉スペクトラム症(ASD)といった特性のあるお子さんを持つご家庭に向けて、年齢や発達段階に応じた「マインドセットの育て方」を具体例とともにまとめてみました。
今回は精神の自立のお話です。

知的障害のある子どもに必要な「6つの心」とは?
既に自立の姿勢と感謝の心と述べましたが、もう少し詳しく、障害があるからこそ大切にしたい“心のあり方”として、私は次の6つを大切にしています。
心の姿勢 | 内容 |
---|---|
自立の姿勢 | 「自分でやってみたい」「できることを増やしたい」気持ち |
感謝の心 | 支えてくれる人や環境への「ありがとう」の気持ち |
自己理解・受容 | 自分の得意・苦手を知り、責めずに受け入れる姿勢 |
挑戦意欲 | 失敗してもOK!やってみようと思える勇気 |
他者との協働 | 誰かの役に立ちたい、自分も社会の一員だという意識 |
自己表現力 | 自分の気持ちや困りごとを伝える力(=合理的配慮を求める土台) |
自立の姿勢:「できることを増やしたい」気持ちを育てる
今の家庭教育でも療育でも支援級でも本人達の生活の自立、経済の自立、精神の自立のために力を尽くしています。ただ、当の本人にそのつもりが無かったら、結局は叶わないということになります。
「自分でやってみたい」「できることを増やしたい」という気持ちを育てるにはどうするか、今はこのようにしています。
育て方のポイント
- 小さな成功体験を積ませて、「できた!」という実感を与える
- 「やってあげすぎ」を避け、待つ・見守る姿勢を持つ
実践例
- 朝の身支度をタイマーやチェックリストで自分で進める
- 洗濯物を畳まず「ハンガーごとしまう方式」で“自分でできる”を実現
声かけ例
「今日は一人でできたね、すごい!」
「手伝おうか?それともやってみたい?」
感謝の心:支援に気づき、ありがとうを伝えられる子に
誰だって感謝されると嬉しいものです。支援していただいている方々に感謝の心を忘れるということはその支援していただいていてることを当たり前と感じてしまっていることに他なりません。そういう人に何かをしてあげようという気になるでしょうか?たとえ仕事でも嫌だと思います。
育て方のポイント
- 具体的な場面で「ありがとう」を一緒に言う習慣を作る
- ありがとうと言うことが相手にとって非常にうれしい事を伝える
- 感謝が「強制」にならないよう、喜びや安心とセットで伝える
実践例
- 助けてもらったら一緒にお礼を言う
- ありがとうを言えたらその場でできていることを伝えてほめる
声かけ例
- 「○○さんのおかげで助かったね、ありがとうって言おうか」
- 「笑顔でお礼を言われたら、うれしい気持ちになるね」
- 「ありがとうって言ってくれてありがとう」
自己理解と受容:苦手を責めずに認める力
支援されている側が自分の得意・苦手を知り、責めずに受け入れているとしたら、支援する人がとても支援しやすくなると思います。
育て方のポイント
- 良いところ・がんばっているところをフィードバックする
- 苦手なことは「工夫で乗り越える」経験を増やす
実践例
- プログラミング教室でもらった「ここまでできた」というシートを共有する
- 「頑張れた理由」を一緒に振り返る
声かけ例
- 「夢中になってロボット作ったから「つくる力」がほぼ満点だよ、すごいことだね」
- 「つらい時、先に伝えてくれて助かったよ」
挑戦意欲:「やってみよう」を応援する関わり方
肝心要の支援される本人が何も挑戦しようとしなかったら、支援する側には何もできません。挑戦の心は本当に重要だと思います。
育て方のポイント
- 成果よりも「挑戦したこと」を褒める
- 失敗しても否定せず、「次に活かす」思考を育てる
実践例
- 苦手な活動にも少しだけチャレンジする「挑戦タイム」を設定
- ミスしても笑って「OK!」ができる雰囲気をつくる
声かけ例
- 「10分!10分一緒にやってみよう!」
- 「壊れたロボットもう一度組み立てたらもっと良くなったね」
他者との協働:社会の一員としての役割を持つ
支援する人と支援される人、一緒に何かをやる、そんなときは多いでしょう。協力する姿勢は支援される側が持ちたいマインドです。
育て方のポイント
- 「役割」を持たせる
- 他者との関わりをポジティブな経験として伝える
実践例
- 家族の「お風呂用意当番」などを毎日担当
- 学校で「支援級の新入生にいろいろと教えること」に積極的に関わる
声かけ例
- 「お風呂用意してくれて助かったよ!」
- 「一年生の面倒を見てくれて助かったって先生が話してたよ」
自己表現力:「困った」を自分で伝えるために
相談力と言ってもいいかもしれません。支援する人がすべてを察するのは事実上不可能かと思います。自分の困難を自分で相談しに行く、それを適切に表現できる力は必須だと思います。
育て方のポイント
- 気持ちや困りごとを表現できるような練習機会を日常に
- ピクトグラムや感情カードなどの視覚支援を活用
実践例
- 相談できた時にそれが望ましい行動であることを伝える
- 療育で「うれしい・かなしい・いや」などの感情カードを使って話し合いをしていただいてます
声かけ例
- 「相談してくれてありがとう」
- 「ちゃんと意地悪されたとき悲しかったって言えたね」
まとめ:精神の自立とは、社会とつながって生きる力
私たち親が目指す「自立」は、ただ一人で全部できるようになることではありません。
「誰かと協力しながら、自分らしく生きる力」
それが、障害のある子どもたちにとっての真の自立だと思います。
そのためにも、マインドセット――心の持ち方――はとても大切。
日々の関わりの中で、ちょっとした声かけや経験の積み重ねが、子どもたちの未来を支える大きな力になります。
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